妄想力を形に~二次元から三次元への扉を開く 〈後編〉

Session 01 宇野常寛×武地実

 
Session 01 宇野常寛×武地実

日本のハードウェアスタートアップよ、もっと狂え!

宇野:今の世の中ってスマホが普及し始めたあたりから、テクノロジーを「リア充」のために使いすぎだと思いませんか?Facebook然り、Instagram然り、それはそれで世の中を変えていく力を持っていて、そこから出てくるカルチャーもあるとは思うんです。ただ、僕らが子供だった70-80年代って、虚構がいまよりも強い影響力を持っていた時代で、現実には存在しない未来を、夢として見せてくれてたんですよね。つまり、ここではないどこかへ連れていってくれるものが、SFでありキャラクターであり、テクノロジーというものだったんですよね。僕は個人的にGateboxにその頃の香りを感じてるんですよ。

武地:おおっ!めちゃくちゃ嬉しいです!

宇野:現実にだけに目を向けて、ビジネスをすることだけが、テクノロジーの使い道じゃないですよね。昔のスティーブ・ジョブズを見てみると、ヒッピーにかぶれてて、カウンターカルチャーに染まっていて、大学ではまともに対人コミュニケーションも取れない、夢の世界の住人みたいなもんですよね。まぁ、僕もそっち側の人間なんですけど(笑)そんなオタクの妄想みたいなものが最終的には世界を変えていくわけだと思うんですよ。僕が思うに日本で西海岸のコピーをしているところからは次世代のジョブズは出てこないと思うんですよ。もうちょっと自分の妄想といういうか、「真善美」でいったら「美」ですよね。みんな真とか善に対する興味が強すぎて、美に興味がない。ジョブズの原動力ってテクノロジーに対してのある種のフェティッシュだと思うんですよね。最近の東京にはフェティッシュを欠いた製品しかないって思っていたところに、Gateboxという、フェティッシュの塊が出てたのでとても嬉しかったですよ(笑)

武地:そうなんですね(笑)ちなみに、初めてGateboxを知っていただけたのはいつ頃ですか?

宇野:2年前にネットでバズってましたよね。すごいヤバいのが出たって。しかもめちゃくちゃ値段も高い、みたいな(笑)あの時ですね。しかも、DMM.makeから出てきたって聞いてワクワクしましたよ。

武地:DMM.makeさんには開設された日から入居していて。オープンスペースの空間だったのですが、誰にも見つからないないように会議室でこそこそと開発していました(笑)

宇野:日本のハードウェアスタートアップにはもちろん面白いアイディア、いい製品もあるとは思うけど、規模としては決して大きくはないのが実情だと思うんです。個人的には正攻法で、深センやシリコンバレーの会社と戦ってもなかなか勝ち目はないのではと思っていて、日本ならではのニッチなもので勝負するべきと考えているんですよね。つまり、狂気が足りないんですよ、現状の日本のハードウェアスタートアップには!

武地:もっと狂えと!(笑)

宇野:もっと狂うべきですよ!ジョブズも絶対西海岸で狂っていたはずなんですよね(笑)

Gateboxは西海岸とアキバの文化的交差点

武地:もう少しDMM.makeの話をすると、初めて小笠原さん(DMM.make初代プロデューサー・現エンジェル投資家)に試作機を見てもらったときには、「これはヤバい」と。とても反応が良くて嬉しかったのを覚えていますね。

宇野:日本のハードウェアスタートアップ業界は深センやシリコンバレーと正面から殴り合う規模ではないと思うんですよね、残念ながら。なので、思いっきり尖らせて存在感を出していくことが大事だし、日本のサブカルというか、東京というちょっと変わった街から出てくる面白い想像力に賭けるということがないと、そもそも存在意義がないですよね。

武地:日本てカルチャー的には魅力いっぱい詰まった国ですし、こんなにキャラクターにあふれた国は世界に存在しないですよね。

宇野:これはハードウェア業界だけの話ではなくて、日本のスタートアップ全般に言える話なんですけど、東京じゃないと出てこないものをもっと考えるべきだと思いますね。そう言った意味では、Gateboxってそのど真ん中の製品で、こういったものは東京というかアキバからしか出てこないと思いますよ。 文化史的に考えても、西海岸のギークカルチャーと東京オタクカルチャーの交差点にあるのがGateboxだと思うんですよね。それくらいの発想がないと、辺境の島国から新しいものって生まれないですよね。キャラクター文化の一つ、アニメだってそうだったわけで。ディズニーに憧れた手塚治虫がアニメを作り始め、しかも低予算で製作してしまったがために、今の日本の独特な日本のアニメ文化ができたわけですよね。そして、それが半世紀たって多様な文化に結び付いて変容を遂げる。今後はグローバルの波をどうやってローカライズし、自分のものにしていくのか。つまり新しい潮流をいかにして二次創作的に解釈していくかが重要になると思います。振り返ってみれば、日本車だってそうですよね。日本はアメリカじゃないんだから、車は大きくなくてもいいし、逆に小回りがきいて燃費がいい方がいいよね、という考え方があって。日本独自の目線で発展を遂げた結果、それが逆に世界に輸出されて行った。ハードウェアに限らずスタートアップ周り全般は、グローバルでの展開を考えるなら、いかに日本らしい製品で勝負できるかがカギになると思います。

二次元から三次元への扉を開くGatebox

武地:少しビジネス的な側面から話をしていきたいと思っているんですけど、ここ最近のアニメ・アイドルを含めたオタクカルチャーって、宇野さんから見ていてどのような流れになってきていると思いますか?

宇野:この10年でオタク文化って大きく変わりつつあって、二次元が主流だった時代から三次元に押されてきてたと思うんですよね。でもそれがここ2-3年、また二次元が力を持ち始めている感じがして。コンテンツの収益力でいうと、「嵐」の次が「アイマス」で、さらに新しい勢力としてはVTuberなんていうのも出始めてますよね。二次元と三次元をミックスすれば最強なんじゃないかって。ただ、ビジネス的に見た場合、三次元が主体という構図は変わらなくて。具体的にいうと、アイドルグループが先にあって、それをドライブさせるためにアニメで萌えさせて、ライブで集金、というような流れですよね。面白いのはGateboxはその逆をやろうとしてる感じがしてるところですね。本来二次元の世界だったものをGateboxというデバイスを通じて三次元に持ってこようとしているという。

武地:Gateboxでこだわっているのは、いかに現実世界に影響を与えられるかということころで、キャラクターと一緒に暮らすという感覚をどうやったらユーザーに感じてもらえるのかをテーマにしています。同じ空間に住んでいるということならば、その空間に何かしらの影響を与えることでその感覚を感じてもらえるのではと考えていて、それでキャラクターが電気をつけてくれたりとか、家電操作などの仕組みを入れてたりします。

宇野:なるほど。実は二次元の世界が現実世界に影響を与えるということは、すでに色々なところで起こっていると思うんですよね。押井守さんに取材したときに聞いたんですが、湾岸戦争の頃、アメリカの若い兵士が徴兵されて戦場にいくと、皆、映画の中の兵士のような振る舞いをするようになったというんです。これは、戦場のイメージがハリウッドに代表される映画に影響されていることを証明していて、さらには、90年代くらいから建設された軍の基地なんかも映画の中のデザインに影響されて作られているということみたいですね。つまり、20世紀の人間は、劇映画が最大の共通言語ということなんですよね。19世紀はまだまだ活字カルチャーで、小説家がその影響を与える側にいたんですけど、20世紀になってからは映画が生まれて、テレビが普及して。そうすると、アスリートと映画俳優とミュージシャンがカリスマになり、最大の共通言語が映画になるってことですよね。明らかに映画やドラマ、アニメの影響を受けて現実世界が変わって行ってるというその流れを考えたら、キャラクターが僕らの日常生活の中にいるということ自体が自然な流れですよね。むしろ、21世紀になったのにまだ完全に普及してないことがおかしい、というくらいに。

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