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テクノロジーの進化がもたらすキャラクターと人間の関わり 〈後編〉

Session 02 中野信子×武地実

 
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テクノロジーによる表現の変化と変わらない人間の欲求

武地:日本のキャラクター文化についてもう一つ付け加えると、キャラクターを創るという人がたくさんいるのが日本の面白いところだなと感じています。なんでもかんでもキャラクターにするじゃないですか、戦艦とか刀剣とか。

中野:その話でいうと、私、京都の刀展にいったことがあるんですけど、そこに行列を作っていたのがほとんど女性で驚きました。萌え文化ってかつては男性だけのものって思われていましたけど、今では全然そんなことないんですね。

武地:そうですね、だいぶ時代が変わってきている感じはしますね。

中野:あと、日本のキャラクター文化で興味深いのが線画という手法ですね。これにはかなり地域性みたいなものが反映されていると思っています。例えば、ヨーロッパのラスコーの洞窟から出土した数万年前のもの、マンモスの牙の彫り物とかは全て写実的に描かれているものが多いんですね。その一方で、日本の洞窟から出土したものとかは全く雰囲気が異なるんですよね。もっと抽象化された表現で、これが発達していくと線画になるなと感じを受けました。二つの集団間で物事の捉え方が大きく違うってすごく興味深かったですね。

武地:なるほど、それは面白いですね。太古の昔から脈々と日本のキャラクター文化が受け継がれてきているんですね。そういったキャラクターの表現手法もテクノロジーが進化することで、更に変わってきていると思うんです。
具体的に言うと、キャラクターとの距離がどんどん近づいてきているなと。はるか昔だと、神話などが作られて紙というメディアに載せられることで、たくさんの人に思想が流布されていく。そのあと映像が誕生して、キャラクターが喋ったり動いたりすることでまるで生きているように感じられるなり。今だとゲームとかキャラクターともっとインタラクティブな関係性を持てるようにもなってきましたよね。それがさらに進化することでVTuberとか画面の向こうでまさに生きてると思えるようにまでなってきました。

中野:そうですね、かなり進化しましたよね。まだ2000年の初頭ぐらいにバーチャルアイドルが登場したこともありましたけど、あまり成功したとはいえなかったと思うんですね。あの頃と比べると表現の柔軟さや奥深さに隔世の感がありますね。

武地:今はYouTubeとかキャラクターが活動するプラットフォームがあるというのもありますけど、技術的なことで言うとモーションキャプチャーなどのテクノロジーが、一般の人でもスマホがあれば使える時代になったと言うことも大きいですよね。

中野:今だったらMacでちょこっと作れるような画像も昔はすごく高額だったわけですよね、SGIとか使って。デバイスの進化の速度というのがあまりにも大きいと思いますね。一方で流行っている表層の部分、よく花と土に例えたりするんですけど、土の部分のデバイスは進化しているけど、花の部分は代わり映えしないよねって議論もあったりしますよね。二十五年前に流行っていたものが今も変わらずだったりとか、ずっと同じ人がテレビに出ていたりするよね、とか。だけど、そこを下支えする部分はとても大きく変わっているんですよね。

武地:アニメもセル画からデジタルになっているとか、パッと見はそんなにわからない部分でも実は大きく変わっていますよね。

中野:そうですね。ただ、人に受け入れられる形やスタイルそのものの基本形は意外と変わっていないという印象があって、そこに法則性があれば面白いなと考えています。

武地:人間が最終的に欲しい体験やものは時代が変化しても変わらないのかもしれませんね。

中野:人間の欲しい体験ということでいうと、脳内でドーパミンが出るタイミングがあって、何かを手に入れたいと思っているときに、手が届きそうで届かない状態で、結果に対する予測とか期待が大きくなっているときに一番ドーパミンが分泌されるんですよね。例えば、競馬をする人が言うには「この馬券をかったら大穴かも」というタイミングが一番楽しい、つまりドーパミンが出ている状態なんだそうなんです。結果的に当たろうが負けようが、それはあまり重要でなくて、当たるかもしれないという期待値が高まっているときが一番ドーパミンの出ている状態のようです。
それを物語に当てはめると、こうすればこうなるという期待の部分が大きくて、きっといい結果が待っていると想像させることができれば、受け入れられるということなんですね。極端にいうと、その話が本当かどうかなんて二の次なんですよ。

武地:なるほど、結末よりも過程のほうが大事ということですね。僕も起業して、Gateboxを作っている過程はとても楽しかったのを覚えています。実現するかどうかもよくわからないけど挑戦してみたい。その先にはきっとこういうものがあるんだと想像しているときが一番楽しかったです。Gateboxの原型も木から作り上げたんですけど、何かすごいものができそうだと、一瞬光明が見えるときがあって、その瞬間はめちゃくちゃドーパミンでていましたね。

中野:そうですよね、世界の他の人がだれも共感してくれないとしても最高に楽しいですよね。とてもよくわかります。研究室ってそういう感じの場所ですよね。

Session 02 中野信子×武地実